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花盛り朗読




心のこもったひとり語り

Posted by 小林大輔 on 26.2018 日記 0 コメントを投稿
私のこの前のブログの中で「あなたも『朗読』ではなく、『ひとり語り』をやる事をおすすめします」と、こう申し上げました。
そう申し上げた私の舌の音も乾かぬうちに「朗読」ではなく「ひとり語り」を、テレビの中でやってのけた人がいました。

沖縄糸満市の摩文仁(まぶに)で、6月23日沖縄戦没者追悼式がありました。この模様をNHKがテレビ中継していました。
ここに登壇した地元の代表・浦添市立滝川中学の3年生 相良 倫子(さがら りんこ)さん(14歳)が「平和の詩」と言う詩を、見事に「ひとり語り」したのです。テレビでご覧になった方も多いでしょう。

「相良さんが朗読をいたします」と司会者が、事前にこのように紹介しました。
この司会者の言葉から、私はこの幼い女の子が「生きる」と言う詩を書いた文章を、壇上で「朗読」するのだとばかり思っておりました。
しかし登場した相良 倫子さんは、手に原稿を持っていません。
彼女は何も持たずに登壇し、決意を込めて、視線を最後まで客席の方へ向けたまま、約7分間の「生きる」と言う詩を、自分の言葉として力強く語り通したのです。

私は相良さんの語りに、思わず引き付けられました。
彼女はやや緊張しているようには見えましたが、言葉に詰まる事も淀むこともなく、終始堂々と語り終えたのです。

テレビカメラは、相良さんの一挙手一投足を克明に追っていました。
語り終えた相良さんは、自分の席に戻って、はじめて指導を受けた先生か、仲間の顔を見つけたのでしょうか、やっと笑顔になりました。

私は、この子はスゴイ!と思いました。
この壇上に上がるまで、彼女は大変な努力を重ねたことでしょう。彼女が陰で行った努力は、おそらく私達の想像を超えています。
しかし、何と言ってもスゴイのは、大勢の人の前で彼女が見せた「集中力」です。

相良さんの次に登壇したのは、内閣総理大臣の安倍晋三さんでした。
彼は、たぶんどなたかおつきの役人の書いた原稿でしょう。
いつも通り手慣れた様子でスラスラとこれを読んでいました。
相良さんの記憶するまで読み込んだ渾身の「ひとり語り」と比べると、総理の「朗読」は私にはひときわきれいごとに思え、空しく聞こえました。

やはり、全文を記憶してしまうほど読み込んだ相良さんと、誰か他人の書いてくれた文章を直前に手渡され、それをいつもの通り、朗読している総理の差。
私はそれを感じたのです。総理はそれほどお忙しいのでしょう。

私達の朗読は、何度も何度も、繰り返し読み込むうちに全文を記憶してしまうほどになる。これが本物の朗読です。
これこそ「朗読」が「ひとり語り」に近づいた姿だと思います。
「朗読」には「ひとり語り」が欠かせない、と申し上げましたが、「ひとり語り」をステージ上でやって見せることだけが、「朗読」の成功例ではありません。
読み込んで、更に何度も読み込んで行くうちに、それが結果的に「ひとり語り」にまで到達する・・・こうなる事が「朗読」の理想の姿でしょう。

「朗読」の中で、「ひとり語り」まで行くと、聴く人に何かを、懸命に訴える力が表面に出てきます。
台本を持たない「ひとり語り」を実践してみて、私もやっと文中に秘められたその伝えたい事が、はじめて分かったような気がするのです。

追記
やはり6月26日の新聞に
 国会も演説しろよ  あのくらい。
と言う、読者投稿の川柳が載っていました。

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